実際のホルモン補充療法論文の紹介
米国のWHI(Woman Haelth Initiative)という臨床研究 WHIは、米国内40ヵ所の医療機関を通院中の、50〜79歳の閉経後の女性で、子宮摘出術を受けていない(つまり、子宮のある)1万6,608人を対象に、比較試験を行いました。 以下が、その成績です。 以下の一覧表は、プラセボー(偽薬群)を、1とすると、ホルモン群(実薬群)では、どの位の倍率で病気が増えるかを計算しました。例えば、乳がんであれば、普通の人では、1人のがん発症であるところ、ホルモン療法をしている女性では、1.26人に増えます。 すなわち、1より大きな数値は、ホルモン療法をしていると、病気が増えることを意味します。一方、1より少ない数値では、ホルモン療法をしている女性に、病気が減ることを意味します。骨折では、1より数値が少ないですから、ホルモン補充により、骨折が少なくなる事を示します。 乳がんの発症 HRT群 1万人に38人 プラセボ群 30人 心筋梗塞の危険が5年で1.24倍、1年目が特に高く1.81倍に、増える。 骨粗鬆症と大腸がんはHRT群で減少 (短期のHRTは大腸がんリスクを50%減少させた)
結論は、5年にわたり、16608人が、HRT治療をうけた結果、治療によるリスクが、益より多いと判断された。最初の計画では、当初2005年3月31日まで、投薬が予定されていました。この初回結論の時点で、この治験は、早期中止となった。 以上が、最初に発表された5年間のデータでした。さらに、その後も、一部の対象の女性について追跡され、観察が続けられました。そして、乳がんに関しては、発症しやすくなるだけでなく、重症化もしやすくなることが、わかりました。 以下が、初回論文後に発表された続編の論文です。 論文その2−1 WHIの長期観察 計画の中止以降、当初、参加者の83%にあたる生存者1万2,788人について、2009年8月14日まで追跡しました。追跡期間の平均値は、11.0年(標準偏差 2.7年)でした。 プラセボ群に対し、実薬群では、乳がん死亡 1.96倍、乳がん発症後総死亡率 1.57倍でした。 侵襲性の乳がんを発症したのは、プラセボ群では、293人(年率0.34%)だったのに対し、 エストロゲン+プロゲスチン群では385人(年率0.42%)と、1.25倍でした。 乳がんは、組織学的所見、グレードについての差はみられなかったものの、リンパ節転移陽性となったのは、 プラセボ群では43人(16.2%)に対し、エストロゲン+プロゲスチン群では81人(23.7%)と、1.78倍に上りました(95%信頼区間:1.23〜2.58、p=0.03)。 また乳がんによる死亡も、 プラセボ群が12人(年率0.01%)に対し、エストロゲン+プロゲスチン群が25人(年率0.03%)と、1.96倍でした。 さらに乳がん発症後の総死亡率も、プラセボ群が31人(年率0.03%)に対し、エストロゲン+プロゲスチン群が51人(年率0.05%)と、1.57倍でした。 論文その2−2 WHIと直腸がん 2011年に、再度、女性ホルモン療法と、直腸癌の関連に関して、長期に観察した論文がでました。WHIによって調査されたエストロゲン+プロゲスチンの併用治療は、かつて、直腸がん発生率を減らしたと報じられました。しかし、その後、2011年になって、7-9年以上のホルモン補充療法を続けた群の女性を、再検討の結果、直腸癌が減少するとした当初のホルモン療法の優性は、否定されるに至りました。
論文その3 2002年、WHIの最初の論文が出た時は、効果より危険が勝るとの結論になり、そのため、世界的に、反響が強くでました。それまで、諸外国では、閉経後の女性が、高率に受けていたホルモン補充療法が、めだって低下しました。そうした実態が論文になっています。 1992年から2003年6月までの間、ホルモン補充療法の処方への影響を検討しました。 資料は、2つの製薬データベースIMS Healthによりました。 結果:更年期の経口エストロゲン及び経口エストロゲン+エストロゲンプロゲスチン合剤の外来患者向け処方数は、1992年を3450万から、2000年に2.5倍(153%)の8730万に達していました。 WHIの結果の公表後、2002年7月から2003年6月の間、これらの製品に対する処方は、5960万(2000年のピークからの32%の減少)まで落ちました。経口プロゲスチンに対する処方は、1995年に1750万まで上がって、それから順次減少しました。 WHI公表後に、経口プロゲスチン経口エストロゲンプロゲスチン組合せ薬に対する処方は、1995年のピークから890万となり49%減少しました。 結論:更年期のホルモン剤処方は、1992年以後増加して、2000年にピークに達しました。2003年6月までに、更年期の経口エストロゲンとエストロゲンプロゲスチン組合せ剤の処方は、ピークの年からおよそ3分の1低下しました。 Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2004;14::171-176 PubMed15386701 ホルモン剤処方の低下率に関する論文は、他に以下の論文があります。 2002年(H14年)のWHIの発表以後、HRT治療の選択率は下がっています。 H13年62.8%、H15年54.1%、H16年48.1%、H17年35.9% 論文その4 ホットフラッシュの再発 平均、5.7年間、ホルモン補充療法を受けていた8405人を対象に、ホルモン実薬群4085人とプラセボ群4320人で、ホットフラッシュを調査しました。 HRT中止時の平均年齢は、69.1歳でした。 治療中止後、ホットフラッシュの発現率は、ホルモン療法群(実薬投与群)21.2%、プラセボ群4.8%でした。特に、55歳から59歳のホルモン療法群の女性で、中止後のホットフラッシュの再発率が35.8%と高くなりました。 その他に、関節、体幹、四肢の痛みを訴えたのは、ホルモン療法群で36.8%、プラセボ群で22.2%でした。 疲労感は、ホルモン療法群で21.3%、プラセボ群で11.6%の人が訴えました。 入眠障害は、ホルモン療法群で17.7%、プラセボ群で8.4%の人が訴えました。 Ockene JKら JAMA 2005;294:183 論文その5-1 乳がん 乳がんの研究は、治験の中止後も、調査が継続しています。2002年から2007年までのPubMed(医学論文を紹介するサイト)によると、HRT(ホルモン補充療法)が低下したことによる乳がんの低下が確認できます。 2001-2年と、2005-6年を比較すると、乳がんは、22%低下しているとのことです。 2010年、乳がんによる死亡と、ホルモン補充療法の関係につき、JAMA誌2010年10月20日号に、WHI(Woman Haelth Initiative)の新しい論文が出ましたので、ご紹介します。この論文の内容は、ホルモン補充療法は、乳がんの進行や転移による死亡と関係したことです。 論文その5-2 乳がん 米国UCLAメディカルセンターの、WHIが明らかにした。閉経後女性1万6,608人を、平均11年追跡した。乳がんリスクが増加することは明らかになっていたが、乳がん死亡率については未報告だった。当初被験者の83%にあたる生存者1万2,788人について、2009年8月14日まで追跡した。追跡期間の平均値は、11.0年(標準偏差:2.7年)だった。プラセボ(偽薬)群に対し、実薬群(女性ホルモン投与群)は、乳がん死亡1.96倍、乳がん発症後総死亡率1.57倍と増加した。また乳がんによる死亡も、プラセボ(偽薬)群が12人に対し、エストロゲン+プロゲスチン群では25人で、1.96倍だった。実薬群で、乳がん死亡が増加した。 JAMA. 2010;304(15):1684-92. Chlebowski RTら 論文その5-3 乳がん Lancet. 2003 Aug 9;362(9382):419-27. 2003年、WHI発表の翌年に、ランセット誌に載った論文の紹介です。百万女性研究The Million Women Studyです 50-64歳の英国在住の女性 1084110人おける、ホルモン補充療法と、乳がんの発症に関する論文です。 調査は、1996 年から2001年に行われ、結果は、2003年に発表されました。この集団に属する女性では、約半分に、ホルモン補充療法が行われていました。そのうち、 9364 人に、乳がんが発症し、637人が、乳がんで命を失くしました。2.6 年から 4.1年間の観察期間でした。 疫学的に数値補正後、現在、ホルモン補充療法を受けている女性は、受けていない女性と比べて、乳がん発症のリスクは、1.66 倍[95% CI 1.58-1.75], p<0.0001)、乳がんによる死亡は1.22倍 [1.00-1.48], p=0.05)となりました。 しかし、現在でなく、ホルモン補充療法が過去の出来事だった人では、リスクの上昇はありませんでした、乳がん発症は、1.01倍 [0.94-1.09]、乳がん死亡は、1.05倍 [0.82-1.34]。 しかし、エストロゲン単独治療群では、1.30倍 [1.21-1.40], p<0.0001)となりました。,エストロゲン・プロゲステロン剤では2.00倍 [1.88-2.12], p<0.0001), 合成エストロゲンのtiboloneでは1.45倍 [1.25-1.68], p<0.0001),でした。
製剤別の乳がんリスクは、経口(飲み薬)1.32倍 [1.21-1.45];、経皮(貼り薬)1.24倍 [1.11-1.39];、挿入型のエストロゲン単独製剤1.65 倍[1.26-2.16]となりました。ホルモン補充療法の使用が長いと、乳がん発症が増加しました。
論文その6 肺がん 血圧は、レニン及びアンギオテンシンと呼ばれる物質の支配をうけています。レニン・アンギオテンシン系は、血圧上昇に働きますので、レニン・アンギオテンシン系を抑える薬は、ACE阻害剤、ARBと呼ばれ、世界的に使われています。エストロゲンは、この物質にも関連します。
エストロゲンを投与すると、女性に益になると考えられている根拠は、卵巣除去マウスからの実験から推定されていることが多いです。卵巣除去したマウスでは、腎機能が悪くなります。そこにエストロゲンを人工的に投与継続的に与えると、腎臓機能が維持できます。しかし、エストロゲンの間欠的では、そうした効果が期待できません。 今回のカナダの研究で、66歳以上の女性で、経口のホルモン補充療法を行っていると、腎機能がわるくなる(糸球体ろ過量)が低下することが示されましたので、紹介します。
Kidney International 2008;74,377
ホルモン補充療法群(エストロゲン群1083人、
黄体ホルモン群40人、 エストロゲン+黄体ホルモン群336人)と、 ホルモン補充療法を受けていない女性群4386人 の間で、腎機能を2年間にわたり比較しました。女性たちの年齢は、66歳以上で、3群とも10-20%に糖尿病などの合併があります。レニン・アンギオテンシン系の降圧剤は、3群とも、40%に使われています。 2年間の間に、ホルモン補充療法を受けている人では、腎機能がわるくなる(糸球体ろ過量)が低下することが示されました。この腎機能の低下は、エストロゲン使用量と関係しました。エストロゲンを膣に挿入している人(経膣的エストロゲン)では、この腎機能低下はみられませんでした。エストロゲン+黄体ホルモンの併用群にも、腎機能低下はみられませんでした。
今回の研究では、経膣的エストロゲンは、経口と異なり、腎機能への悪い影響は出ませんでした。経口薬と比較し、肝臓の代謝酵素の誘導などが少なくて済むことが関係するようです。 経口エストロゲンは、レニン・アンギオテンシン系に作用し、血圧を上昇させます。妊娠中の女性では、循環血圧量が増大しますが、レニン及びアンギオテンシンの調節作用により、高血圧を避ける方向に働きます。妊娠中は、大量の内因性の女性ホルモンは、血圧をさげる方向に働きます。しかし、ピルなど人工的に投与されたエストロゲンは、血圧をあげてしまいます。特に、高齢になってからの外から経口的に体内に入ったエストロゲンには、レニン及びアンギオテンシンを上昇させます。そして、腎臓の機能を低下させます。
論文その8 卵巣がん
英国における百万女性研究the Million Women Studyの結果を紹介します。 今回は、卵巣がんとホルモン補充療法との関係です。 卵巣がんは、乳がんよりずっと、数は少ないですが、女性がんの4番目に位置する、死亡率の高いがんです。若い女性をピルなどで、自然の排卵を止めてしまうと、卵巣がんが減少することがわかっています。それをもって、女性のピルは、安全であると、もっていく説明がありますが、ピルの作用は、多様です。 今回は、閉経後の女性の話です。卵巣内のどの部分ががん化するかにより、組織学的に分類されています。 Lancet. 2007 May 19;369:1703-10.
論文その9 英国における百万人研究英国在住の948,576人の閉経後の、がん発症のみられない女性を追跡調査しました。この集団の女性を、5.3
年間追跡し、死亡は、6.9年間追跡しました。
287,143人 (30%) の女性が、その時点でホルモン補充療法を続けていました。186 751
人(20%)は、過去にホルモン補充療法を続けたことがある人でした。
2273
人が卵巣がんとなり、1591人の、がん死が記録されました。卵巣がんの発症と、それによる死亡は、ホルモン補充療法群を長く続けている女性に多く出ました。がんの発症の相対危険は、1.20倍
[95% 信頼区間 1.09-1.32; p=0.0002] 、がん死は 1.23倍 [1.09-1.38; p=0.0006]
)でした。
過去にホルモン補充療法をしていた女性では、卵巣がん発症や死亡の増加はみられませんでした(発症の危険リスク0.98倍
[0.88-1.11])。
ホルモン補充療法の治療をしている人が、していない人と比べると、卵巣がんのタイプにより、発症リスクが変化しました。
しょう液性の卵巣がんが、ホルモン補充療法群で多くなりました。 しょう液性 1.53 倍 [1.31-1.79],
しょう粘液性 0.72 倍 [0.52-1.00], 内膜様性 1.05倍 [0.77-1.43], 透明細胞がん性 0.77 倍 [0.48-1.23], カッコ内は、{信頼区間} 女性1000人中で、計算すると、卵巣がんの発症は、ホルモン補充療法群で2.6
人(信頼区間 2.4-2.9)、ホルモン補充療法をしていない群で2.2 人(信頼区間 2.1-2.3)と、計算されました。
これは、ホルモン補充療法を続けていると、2500人に一人よけいに、卵巣がんが発症すると計算されました。
卵巣がんによる死亡は、ホルモン補充療法群では、1.6人、ホルモン補充療法をしていない群で 1.3人、ホルモン補充療法を続けていると、3300人に一人よけいに、卵巣がんが発症すると計算されました。 1991年より、ホルモン補充療法が続けられていると計算すると、英国の女性では、1300人の卵巣がんが余分に多く発症し、1000人の卵巣がん死が余分に多くおきていたであろうと計算されました。
米国、WHIの研究発表以前は、世界の先進国の女性が、ホルモン補充に期待していました。比較研究に参加した女性が、かなり高年齢であることから、明らかなように、女性ホルモンは、女性の一生をささえるミラクルな物質という認識があったものと思います。
若い女性で、ホルモン補充療法を行う場合は、自前のホルモン不足など、それなりの正当な治療理由から、女性ホルモンが補充されるため、女性ホルモンの望ましい作用が期待できます。
しかし、閉経後の女性では、事情が異なりなります。しかし、エストロゲンに拮抗作用をもつ黄体ホルモンと組み合わせることで、その発がんの副作用が防げると信じられていたのです。こうして、数10年来、問題となっている女性ホルモンによる発がんに答えを出すために、世界的で大小いろいろな比較試験が組まれました。
WHI試験は、米国で実施された代表的な薬剤比較試験ですが、他の先進国でも、類似の試験が実施されていました。しかし、世界の常識となったWomen’s
Health Initiative(WHI)のネガティブな結果をうけて、多くの比較試験が頓挫しました。
今回紹介する論文は、追跡期間がたった1年で中止になりました。そして、1年弱の観察期間においても、ホルモン群と、偽薬で、新たな病気の発生に関する比較成績が得られました。それは、論文として、2007年ブリティシュメディカルジャーナル(BMJ)に発表されました。
英国などの、米国以外の英語圏の女性たちを募集して、女性ホルモンのと偽薬の二重盲検の多施設無作為化比較試験のWISDOM研究が行われました。当初、10年間、追跡調査が続けられる予定でした。WISDOMは、英国、オーストラリア、ニュージーランドの一般開業医の協力を得て行われました。
当初、2万2300人の人数の女性が参加するはずでしたが、実際に追跡可能となったのは、その26%に当たる人でした。それぞれ、ホルモン群
(n=2196) と、偽薬群
(n=2189),です。参加女性の平均年齢62.8歳)で、閉経後15年が経過していた集団でした。追跡期間の中央値は11.9カ月(6498人-年の追跡)でした。
評価指標は、主要な心血管イベント(入院を要する不安定狭心症、致死的または非致死的な心筋梗塞、冠動脈突然死)、骨粗鬆症による骨折、乳癌に設定しました。その他に、癌、全死因死亡、静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓、網膜静脈閉塞症)、脳血管疾患、認知症、生活の質なども、評価しました。
結果は、プラセボ群に比べ治療群で、脳卒中、肺塞栓のリスクが上昇、股関節骨折と大腸癌リスクは減少することが示され、WHIと類似した結果でした。
プラセボ群(2189人)に比べHRT群(2196人)では、
主要な心血管イベント(偽薬群0人と ホルモン群7人、P=0.016、) 静脈血栓塞栓症(偽薬群3人と ホルモン群22人、ハザード比7.36、) となり、ホルモン群が有意に多い結果でした。 乳癌または他の癌のリスクは、(偽薬群25人と
ホルモン群22人、ハザード0.88、)。
脳血管疾患(偽薬群19人と ホルモン群14人、0.73、0.37-1.46)、 骨折(偽薬群58人と ホルモン群40人、0.69、0.46-1.03)、 と、減りました。
全死因死亡(偽薬群5人 とホルモン群8人、1.60、0.52-4.89) と、全死亡は、ホルモン群で増えました。
統計学的な計算では、これらの数値は、ホルモン群と、偽薬群に有意差は認められませんでした。 エストロゲン単独投与群では、1688人-年の追跡で、いずれのアウトカムにも有意差はなかったです。
なお認知症に関する評価は、できませんでした。
ホルモン補充療法を閉経から年数を経て開始すると、治療開始から短期間の心血管リスクと血栓塞栓症リスクが増すことが示されました。
この研究に参加していたのは、主として60歳を過ぎた女性たちが中心でした。当初から、エストロゲンによる発がんは、予想されていたものの、リスクとベネフィット(益)を天秤にかけるために、この比較試験が行われました。当時、外国で実際に、ホルモン補充療法にしていたのは、閉経後間もなくの人より、もっと年配者であったようです。
使われていたのは、複合エストロゲン・プロゲステロン製剤や、tiboloneと呼ばれる合成ホルモンでした。
ホルモン補充療法の参加者多かったMillion Women Study(百万女性研究)を紹介します。英国で、ホルモン補充療法の効果をみるための追跡集団として、集められた女性たちの追跡調査です。
Lancet. 2005 ;365:1543-51.
ガンが無い、子宮摘出していない英国在住の716,738人の閉経後の女性を、1996-2001年にMillion
Women
Study(百万女性研究)に組み込みました。この集団を、平均3.4年、追跡したところ、集団の中から、1320人の子宮体がんが診断されました。
調査結果: 716,738人の閉経後の女性のうち、320,953人の女性(全体の45%)が、ホルモン補充療法をしていました。その治療法の内訳は、以下のとおりです。 69,577(22%)が、連日続ける、エストロゲン+プロゲステロン療法群、
145,486(45%)が、1ヵ月につき10-14日の間、エストロゲン+プロゲストゲン療法する間歇療法群、
28,028の(9%)は、ibolone群(日本では使われていない合成女性ホルモンで、内膜症や閉経後のHRTに使われる)、
14,204(4%)は、エストロゲン単独のHRTを使用群です。
全体では、HRT使用者は、子宮体がん(p0.0001)発症の危険を高めました。
HRTの治療者は、未治療者に比べ、それぞれの危険率は、以下の通りでした:
ホルモン補充療法をしていない女性にくらべて、
エストロゲン+プロゲステロン療法の連日使用者では、相対危険度0.71[95%のCI 0.56-0.90];
p=0.005)となり、
子宮がんが低下しました。
Tibolone使用者は、子宮がんが増加しました1.79倍[1.43-2.25];
p0.0001)。
エストロゲンのみ使用者では、子宮がんの発症は1.45倍[1.02-2.06];
p=0.04)でした。
エストロゲン+プロゲストゲン間歇療法では、1.05倍[0.91-1.22];
p=0.5)でした。
tiboloneとエストロゲンのみのHRT療法では、子宮がんを増やしましたが、
エストロゲン+プロゲストゲンは、乳がんを増やしました。発がんへのHRTの影響は、肥満女性で大きくなりました。
結論として、エストロゲンとtiboloneは、子宮体がんの危険性を増し、
プロゲステロンは、子宮内膜において、エストロゲンの発がんを打ち消しました。
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