女性ホルモンという名の神話


小説”女性ホルモンという名の神話”の解説

自分の病気を知ることの重要性
要望を医師に告げることの重要性
最後は、自分で考えて、後悔しないこと

この小説に書きたかったのは、医師と患者の信頼関係を築くためのこの三箇条です。人が、慢性の病気、難治な病気を得た時に、医師と患者が信頼関係を続けるためには、双方的に努力が大事です。私がこの小説に書いた病気は、命取りな病気ではありません。しかし、主人公にとっては、日常的に悩まされる大きな問題です。彼女の不快な症状は、薬に抵抗し、やがて、主人公は医療不信に陥ります。医療不信には、さまざまな誤解や思いこみがあります。こうした、よくある医療現場の出来事を、主人公がどのようにのりこえていくのかを書きたかったのです。これは、日頃から私が大事と感じることなのです。治らない病気に対し、患者は怒り、医師は落ち込むわけですが、両者がそうした感情をむき出しにしては、治療は成り立ちません。

今は、情報の世の中で、検診結果、検査数値が、容易に入手できるようになりました。しかし、一方で、結果の微妙な異常で人々は悩むようになりました。がん検診で、グレイゾーンに入ると言われた時から、人々はがんになってしまった気分になります。つまり、結論が出るまでの数カ月、あるいは数年、悩むことになります。あるいは、気になる症状があって医師の診療をうけた時に指摘された検査の異常値に、いつまでもふりまわされる人もいます。

こんな時、とにかく楽天的に考えることが、とても大事です。人の体には、いろいろな病気のイベントが起きています。そして、治してくれているのです。だから、医師が病名の結論を言わない時は、楽観的に考えてよいのです。

女性たちは、しばしば、病気を勝手に作ってしまいます。そうした状況に陥りやすいのは、女性の特質である”不安を感じやすい”という生物学的な特徴のためではないかと思います。女性は、外で冒険をしないように不安を感じやすく、内にこもるようにしくまれています。

この小説には、主人公の女性が、不安発作から、解放されていく過程が書かれています。そして、主人公以外にも、不安発作で病気を作り出してしまう女性たちが登場します。女性たちの不安障害を発症するには、それなりの背景があります。だから、それに気づき、性格として大事に思い、治そうと自分を責めないことです。そんなところを、ぜひ、読み取ってほしいのです。

あらすじ
主人公は、40歳をすぎた独身女性で、名前は栄子です。真面目で仕事に一生懸命です。高卒後、尊敬する男性が社長を務める建築会社に勤務します。

しかし、バブル崩壊に呑み込まれ、会社も社長も理想をうしないます。そして、栄子のはつらつとした若い日はあっという間にすぎて行き、会社における彼女の存在感は低下していきます。栄子は、恋愛のみならず、笑顔にも自信を失っていきます。

栄子は、自らの将来に不安を感じ始めた頃、不快な体の症状が起きてきます。そしていろいろ考えた末、栄子は、その身体症状の治療を、美しい若い女医にゆだねます。当初、栄子は、この女医に強い憧れを感じ、治療効果を感じます。しかし、次第に、主治医の治療や診断に納得できなくなり、同時に治療効果も低下します。

栄子は自らの存在そのものに自信喪失しながらも、希望を捨てない、将来の展望を持ちたいと願います。しかし、同時に、「誰か!私の症状を助けてほしい!」と、漠然とした何かにすがろうとします。

栄子は、自らの病気の診断根拠も治療薬も、主治医は説明しないと感じています。栄子が勉強をして得た医学知識をぶつけても、主治医の女医が相手にしないのです。そして、ついに栄子は、納得できる治療を求めて、行動変容を起こします。



 

 
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