BRCA1とBRCA2と呼ばれる遺伝子の家系的な問題
男性は、がんが発症しやすい事実からわかるように、抗がんの能力には男女差があります。元々、女性は異物排除能が高いことが、ここでも影響しています。しかし、現状は、酒やタバコの消費量は、男女でかなり異なりますので、今の男女差の数値に至っています。ガン化現象も、社会的影響を受けますから、今は、生活習慣の男女差が少なくなり、がんになる人の男女差が縮まってきています。 BRCA1、BRCA2の位置づけが固まるまで
1990年代に入ると、早い速度で、遺伝子異常と、発ガンとの関係についての研究が進みました。1994-1995年に、BRCA1又はBRCA2に遺伝子異常のある人は、高い確率で、将来がんが発症することが明らかになりました。特に、家族内に複数のがんの患者が発生する、いわゆるがん家系で、遺伝子検索がすすみました。代表的ながん遺伝子であるBRCA遺伝子と、乳がん、卵巣がんとの関係が明らかになりました。 当初、遺伝子検査は、大変な労力がかかるものでしたが、方法論の進歩により、大量の遺伝子検索が可能となりました。がんが発症する遺伝子異常のあった人の家族を調査して、がん発症以前に、BRCA1又は、BRCA2遺伝子を検査し、カウンセリングが行われるようになりました。将来の発がんが濃厚に疑われる人では、その臓器を摘出していまう人もいました。しかし、現実には、がん家系の背景のある女性たちを、個々に、将来、どの位のがん発症率であるとの数値を出すことは難しい作業でした。
BRCA遺伝子における蛋白合成にかかわる塩基配列の変異は、750以上の箇所が、報告されています。2000年に入ると、どの部分の遺伝子変異が、将来のがんの発症との関連が強いのかに関して、研究成果が集積されていきました。初期には、家族内にがんが多発する家系が調査の対象であったため、遺伝子異常があると、将来的ながん発症の予測確率は高く設定されていました。
特に、1995年頃の時点では、がん多発の家系を基準に遺伝子検索が行われたため、遺伝子異常のある人の、将来のがん予測は、高く評価される傾向にありました。濃厚ながん発症家系があり、かつBRCA遺伝子異常を持つ女性の場合と、本人はBRCA遺伝子異常を持つが、家系内にがん発症はない女性の場合では、がん発症の予測値は変わります。そのため、予測値は、幅広い値になります。
BRCA2遺伝子の特定部位には、卵巣がんの発症と良く相関する部分が集まっています。卵巣がんが起きやすくなる特定部位の遺伝子変異があり、この場合は、乳がんの発症は、少なくなったりします。1995年に、Gaytherらは、BRCA1遺伝子の塩基配列の最初の2/3部分の異常があると、後の1/3の部分の異常より、乳がん発症と関係することを見つけました。つまり、BRCA遺伝子のどこの塩基配列に異常があるかどうかで(生まれた時に決まる)、乳がん、卵巣がんの発症と関係することがわかってきたのです。
2003年、Antoniouらが、1995年以後の初期の調査結果を示しています。BRCA1の遺伝子異常を持つ女性は、50歳までに、34-73%、70歳までに乳がん50-87%との数値がでており、卵巣がん発症は、50歳までに、21-29%であり、70歳までに44-68%の数値です。BRCA2の場合は、70歳までに乳がん70-80%の発症、卵巣がん30%の発症が予想されるとされました。
さらに、2003年のAntoniouらの同じ論文上で、がん発症者の遺伝子家系調査を、幅広く行った論文をレビューしました。そして、より、一般化できる予測数値を検討しました。
対象となったのは、すでにそれまでに論文発表された22研究論文の8139人のデータ解析でした。すでに、乳がん、又は卵巣がんが発症した女性(インデックスケース)がいる家系に属する人8139人の遺伝子検査をして、そのうち500人に、BRCA1、BRCA2の遺伝子異常がみつかりました。
この調査は、濃厚ながん家系に属する人だけでなく、遺伝子異常のあるがん発症者が単発で親族にいる場合も含みました。 この多施設研究の集計によると、遺伝子を調べた人のうち、BRCA@遺伝子変異を持つ人では、70歳までに、乳がん発症は、44-78%、卵巣がん発症は、18-54%となっています。BRCA2の場合は、70歳までに、乳がん発症は、31-56%、卵巣がん発症は、2.4-19%と算出しています。
特に、家系に、35歳以下でがんになった人のいる人では、遺伝子異常と、将来のがん発症は、高くなりました。BRCA1では、若くしての発症を免れると、加齢してからの発症は少なくなりましたが、BRCA2遺伝子異常者では、そのような加齢との関連の傾向は見いだせませんでした。
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