女性と骨


女性の骨に関する一般知識

骨には、性ホルモン受容体があり、さまざまに性ホルモンの影響をうけています。骨の強さを評価する数値が、骨塩量です。閉経後、若年者の月経過小、無月経の女性では、骨への影響は多大であり、女性ホルモンの影響により、骨粗しょう症になりやすくなります。ビタミンD、カルシウムなども骨の形成に大事ですが、この物質だけを大量にとっても、骨は強くなりません。骨の形成には、他にたくさんのホルモン物質が関与しています。

骨は、骨芽細胞 (osteoblast)と、破骨細胞 (osteoclast)のバランスで作られていきます。若い人の強い骨は、骨芽細胞の働きが盛んであり、閉経後の女性は、破骨細胞による骨の吸収が進み、もろくなります。破骨細胞が活性化すると、骨が吸収されてしまうため骨塩量の低下がおきてしまうのです。

女子のスポーツ選手には、無月経や月経過小が見られることが多いです。あるデータにおると、一般女性では、続発性の無月経は2-5%位の確率でありますが、激しい運動をしている女性に限定すると、44%にのぼると言われています。エストロゲンの低下するだけでなく、アンドロゲンが上昇している場合もあります。

骨塩量を測定するのが、デキサと呼ばれるレントゲン装置です。正確には腰椎と大腿骨頭で骨の強さ(骨塩量)を測定します。手や足で判定するなど、他の体の部位を用いた、レントゲンによらない測定法もありますが、それは簡略法であると思ってください。又、尿や血液検査でも、破骨細胞の働きを調べることができます。

尿検査にて、Ⅰ型コラーゲン架橋Nテロペプチド(NTXと略)を測ることにより、骨の強さをみることができます。Ⅰ型コラーゲンは骨基質の90%以上を占める蛋白質であり、ピリジノリン(Pyr)またはデオキシピリジノリン(Dpyr)により分子構造が保たれています。破骨細胞による骨吸収の際には,骨組織のⅠ型コラーゲンが分解され,そのC末端部分からペプチドが血中に放出されます。この物質の量を、血液検査で測ります。血中ⅠCTP濃度は骨吸収量を反映する指標で、Ⅰ型コラーゲンC末端テロペプチド(Pyridinoline cross-linnked carboxyterminal telopeptide of typeⅠcollagen:Ⅰ)の略です。若年成人平均値(YAM)を基準値として、70%未満であれば、骨粗鬆症と診断し、その評価に望ましい骨部分は、腰椎とされています。但し、高齢になれば、誰でも、骨塩量は必ず低下してきますので、骨塩量の正常値は、年齢により低下してきます。

骨粗鬆症以外に、血中ⅠCTP濃度は、悪性腫瘍、特に肺癌、乳癌,前立腺癌の骨転移症例において、骨転移の見られない症例に比べ有意に高値を示すため、悪性腫瘍の骨移転の目安に使われることがあります。この物質が上昇しているということは、骨が溶けているという証拠なので、治療をすることにより、NTXやCTPは低下してきます。

治療
骨粗鬆症の治療は、破骨細胞の活動を抑制するビスフォスフォネート系薬剤、活性型ビタミンD、ビタミンK、カルシウム製剤の投与や、SERM・エストロゲンの投与が行われます。 ビタミン剤やカルシウム剤は、体質の影響により腸管からの吸収が悪い場合があり、ほとんど効果が期待できないことがあります。
エストロゲンの投与は、乳癌のリスクをあげるので、この目的だけでは用いられません。SERM(ラロキシフェン、バゼドキシフェン)は閉経後女性にのみ有用です。

ビスフォスフォネート系薬剤(フォサマック®、ボナロン®、ベネット®、アクトネル®など)とラロキシフェン(エビスタ®)、バゼドキシフェン(ビビアント®)が、第一選択薬になっています。

ビスフォスフォネート系薬剤は、服用に注意が必要で、毎朝、起床時(朝食前)にコップ1杯以上の水で薬を飲み、服用後30分は食事を摂らず、横にもならないようにします。近年のビスフォスフォネート系骨粗鬆症治療薬は、週1回服用型製剤で効果が期待できる製剤が主流になっている。またFDAは大腿骨頸部骨折後の骨折予防にゾレドロン酸(ゾレンドロネート)の年1回静注を承認したようです。実は米国は、日本より高齢者の骨折が多く発生します。一方、ラロキシフェン・バゼドキシフェンは1日1回食事や時間に関係なく服用できますし、閉経後高コレステロール血症改善、乳癌抑制効果といった効果が期待できます。薬の副作用は、気になるところですが、消化器系の潰瘍の発症のリスクや、下顎骨の壊死などがまれにあります。  

 

 
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