ホルモン補充療法(HRT)


米国循環器学会から女性への勧告 心臓疾患を避けるためには?
AHA Scientific Statement


心血管病(CVD)は、アメリカ合衆国の女性の主要な死亡原因である。アメリカ合衆国では50万人以上の女性が毎年CVDで死亡する。そして、女性の突然死のほぼ3分の2は、死亡前の前駆徴候がないが、この病気を起こす女性のアテローム性動脈硬化性/血栓症は予防が重要となる。しかし、女性のCHDは、今まで、広範囲に研究されていない。今回は、多数の文献(6819論文)を検討し、その研究から得られた知見(介入法)の精度を、レベル分類して、根拠の確立した順から、予防する根拠順に記載した。

根拠の程度の分類法
クラスI 有用・有効性が確立した介入法
クラスIIa 証拠/意見が有効と判定される側にある介入法
クラス IIb 証拠/意見による確固たる有効性がやや薄い介入法
クラスIII  介入は役に立たないか、有害かもしれない介入法

証拠のレベル
A ランダム化(無作為化)された多重盲検法による比較試験において確立したもの
B 単一な無作為抽出法、無作為以外の抽出法
C 専門家の意見、事例研究または標準的介入法

女性に特化できる知見か?
1 恐らく、十分に、女性に一般化できるもの
2 かなり女性に一般化できるもの
3 女性に特化できるそうでないもの
4 0 女性に特化できないもの


日常生活上での予防手段
女性は自ら、煙草を吸わず、かつ環境タバコも避けること。(クラスI、Level B)
女性が、週のうち数日できれば毎日、最低30分の適度な強さの運動(例えば活発に歩くこと)をするのがよい。(クラスI、レベルB)

急性冠状動脈疾患があるか、またはその治療をうけた女性、慢性、急性の狭心症のある女性は、医師の支持する心臓リハビリテーションや、地域に密着したプログラムに参加するのがよい(クラスI、Level B)

健康的な食餌内容とすること。多様な果物、野菜、穀物、低脂肪の脱脂乳製品、魚、豆類と飽和脂肪酸の少ないタンパク質(例えば鶏肉、赤み肉、植物性蛋白)に含むのが好ましい。飽和脂肪酸の摂取がカロリーの10%を越えないよう、300mg/dまでコレステロールの摂取を制限する、そして、トランス脂肪酸の摂取量を制限する。(クラスI、B)

運動にみあったカロリー摂取量に気をつけ体重維持に留意する。BMI(BMI=体重(kg)÷身長(m)2)をは、18.5と24.9kg/m2で維持すること。ウエストは 35インチ以下(クラスI、B)

心の状態を良くしておくこと。心血管病(CVD)のある女性はうつ状態の評価をすること

ハイリスクの心血管病(CVD)の女性は、オメガ3脂肪酸のサプリメントをとるのが良い。(クラスIIb、Level B)
ハイリスクの心血管病(CVD)の女性(ホモシステンレベルが高い女性)は、葉酸のサプリメントをとるのが良い。但し、血管再生術後は除く。(クラスIIb、Level B)

120/80mm Hg以下の最適血圧を維持すること(クラスI、レベルB)
血圧が140/90mm Hg以上の血圧、あるいはそれ以下でも、標的臓器障害や糖尿病が合併している時。サイアザイド利尿剤は大部分の患者で薦められる(クラスI、Level A)

女性の中の最適リポタンパク質は、LDL―C 100mg/dL以下、HDL―C 50mg/dL以上、トリグリセリド150mg/dL以下、と非H―DLC(全コレステロールからHDLコレステロールを引く)130mg/dL以下が望ましく、それにむけて生活習慣にも気をつけること。生活習慣を通してこのレベルの達成をめざすことをこころがける。(クラスI、レベルB)

ハイリスクの女性、またはLDL―Cが高い女性は、飽和脂肪酸をカロリーの7%まで、コレステロールは、200mg/dまで減らすこと、トランス脂肪酸の摂取は減らすこと。(クラスI、レベルB)

薬物療法
ハイリスク(10年間で、20%以上の10年間で、10-20%の心血管病絶対リスクがある)
ハイリスクに属する人とは、すでに冠動脈疾患、心血管病がある人、末梢動脈疾患、腹部大動脈瘤、糖尿病、慢性腎疾患を有する人)
LDL―C 100mg/dL以上でハイリスクの女性は、ライフスタイル治療と同時に、スタチンによる低下療法を始めること(クラスI、Level A)、そして、禁忌でない限り、LDL―C 100mg/dL以下でも、リスクの高い女性はスタチン治療を始める(クラス1、Level B)。
リスクが高い女性では、HDL-Cが低いか、非HDLCが高いとき、ナイアシン、フィブレートを始めること(クラスI、Level B)

中程度のリスク (10年間で、10-20%の心血管病絶対リスク)
この群に属するのは、潜在的な心血管病、メタボリックシンドローム、単一リスクファクターでもその因子の高い人、一親等に若年者(男性では55歳以下、女性では65歳以下)の動脈硬化性の心血管病がある人、
LDL―Cが130mg/dL以上の場合は、スタチンを投与すること(クラスIIa、Level B)、LDL―Cが達成した後には、HDL-Cが低い場合、非HDL―Cが高い場合は、ナイアシン、フィブレートを始めること(クラスIIa,レベルB)

低リスク( 10年間で10%以下の心血管病絶対リスク)
リスクファクターが1以下の人では、LDLCレベルが190mg/dLであるとき、あるいは、複数の危険因子が存在する女性ならば、スタチン治療を考慮してください。LDL―Cが達成した後、HDL―Cが低い、非HDLCが高い時であるとき、治療をfibrateしてください。(クラスIIa、Level B) LDL―Cが達成した後には、HDL-Cが低い場合、非HDLCが高い場合は、ナイアシン、フィブレートを始めること(クラスI,レベルB)

糖尿病の場合
HbA1C(7%)をめざすこと(クラスI、Level B)

アスピリン治療の適応 ハイリスクの場合
アスピリン(75〜162mg)使用すべきだが、アスピリンに過敏な人はClopidogrelを考慮する。(クラスI、Level A)

アスピリン治療の適応 中間リスクの場合
中等度のリスクの女性には、血圧がコントロールされていれば、アスピリン(75〜162mg)使用は、その副作用
(胃腸症状)による問題より、使用したほうが有用であろう。

Blockers-Blockersは、すでに心筋梗塞、慢性虚血性心疾患の全ての女性で、使用すべきである(クラスI、Level A)

ACE阻害剤
ハイリスクの女性には、禁忌事項がない限り、使うべきである(クラスI、Level A)

ARB(アンギオテンシン受容体阻害剤)
ハイリスクの女性には、禁忌事項がない限り、ARB剤を使用すべきである。

心房細動/脳溢血の予防
慢性あるいは発作性の細動のある人では、ワルファリンをINRを2.0〜3.0に維持して使用すべき。
(クラスI、Level A)。ワルファリンが使えない人では、 Aspirin(325mg)アスピリンを使うべき。(クラスI、レベル)

その他の介入
ホルモン療法は薦められない。
抗酸化サプリメントは、現在治験中であるが、心血管病予防には使うべきではない。
低リスクの女性には、アスピリンは薦められない。

 


 

世界の論文から

Am J Clin Nutr. 2008 Jul;88(1):195-202
NaとKの摂取量と、心血管疾患、脳溢血との関係 1988年―1990年
40-79歳の日本人58,730人(男性 23,119人、女性 35,611人)、Na,Kの摂取量と心血管疾患、脳溢血との関係を調査した。調査期間中の死亡者数は、986人であった。脳梗塞による死亡は、510人であった。くも膜下出血153人、脳内出血227人、冠動脈疾患424人であった。
多変量解析によると、Na高摂取群と低摂取群では、全脳溢血1.55 、 脳梗塞2.04、 全心血管疾患1.42の数値であった。
一方、Kの摂取量との関係については、高摂取群で、死亡の低下がみられた。冠動脈疾患、0.65、総心血管疾患 0.73であった。この関連は、女性の方がはっきりしていた。

 

 

 
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