ホルモン補充療法(HRT)


海外の論文


前頁にお示ししたように、外国のガイドラインでは、かなり踏みこんで、女性の循環器病の減少をめざしたメッセージが発信されています。例えば、ホルモン補充療法などへの指針などが、注目されるところです。

女性は、夫がいると、循環器病を増加させる因子となるが、男性では妻がいると、循環器病が低下する因子となることが、示されています。最も、これは一般論で、個々の男女では、リスクが減少するカップルもいると思います。いづれにしろ、心の負担は、循環器病の発症と関係するのですが、そうした知見を紹介していきます。
 

日本人の論文
コレステロールも大事な、心血管病の因子です。全体に、いろいろな病気へのリスクを考えると、コレステロールはやや高い方がよいとか、いや、下げるべきとかについての、コレステロール論争は、現在、議論が続いています。循環器病に関しては、病気を悪化させる因子であることは間違いありません。しかし、以下の論文は、日本人において、脳出血という病気に限定した場合には、コレステロールは、高い方が、生存には有利なようです。コレステロールの高い人たちは、低い人にくらべ、脳出血による死亡は半減しました。
Circulation. 2009 28;119:2136.
背景:低密度リポタンパク質コレステロール(LDL)レベルと、脳実質内出血の危険性との関係に関するデータは少ない。方法と結果:合計30 802人の男性と60 417人の女性(脳卒中または冠状動脈性心臓病の既往のない40~79才)は、茨城県Health Studyで、1993年に主要危険因子をを調査し、2003年までに、脳出血を確認した。264人の実質内出血による死亡は確認された。LDLコレステロール140 mg/dL以上の人は、80mg/dL、LDLコレステロール以下の人と比べると、年齢補正後、実質内出血による死のリスクは、半分になった。多変量解析調整後の数値は、LDLコレステロール80mg/dL以下の人を1とすると、80mg―99mg/dL群で0.65(95%のCI 0.44~0.96)、100~119mg/dLでは0.48(0.32~0.71)、120~139mg/dLでは0.50(0.33~0.75)、140 mg/dL以上の人 では0.45(0.30~0.69)となった。結論:LDLコレステロール濃度が低値の人は、それよ高い濃度の人より、実質内出血による死のリスクが高くなる。
 PMID: 19364982 


これは、同じく日本人におけるデータです。文部省研究(JACC Study)で、国が出費して、ストレスと、心血管病との関係の実態を調査しました。この結果で、興味深いのは、元々、男性に心血管病が多いにもかかわらず、女性の方がストレスとの因果関係が出たとことでした。

Circulation. 2002 3;106:1229  
背景:精神的ストレスは、心疾患や脳溢血による死亡に、どのような影響を与えるかについて、文部省研究(JACC Study)による日本人男女の追跡が行われた。方法と結果:1988年から1990年まで、脳卒中、心疾患またはガンの病歴のない合計73 424人の40-79歳の日本人(男性30 180人と43 244人の女性)を対象に、ライフスタイルとの関係を調べた。精神的ストレスや生活環境は、アンケート調査により評価した。1997年の末まで対象を追跡し、580 378人-年の数となった。この間の死因は、国際疾病分類(10回目の改訂)によって決定された。
女性の疾患イベントによる死亡は、脳卒中316、冠動脈疾患113、心血管疾患(CVD)643であった。男性の疾患イベントによる死亡は、脳卒中341、冠動脈疾患168、心血管疾患778であった。高いストレスを報告した女性には、低いストレスを報告した人々と比較して、年齢補正後、全脳溢血と冠動脈疾患による死亡が、2倍に増加した。全心血管障害は1.5倍になった。既知の心血管危険因子で調整しても、死亡リスクの数値は変わらなかった。多変量解析では、ストローク2.24倍、冠動脈疾患2.28倍となり、全心血管疾患は1.64倍だった。男性では、ストレスとの関係は弱かったが、心筋梗塞は弱く関係した。
結論:精神的ストレスは、女性の脳卒中が増加、そして、男性と女性の冠動脈疾患で増加した。死亡率と関係していました。PMID:12208798



高血圧の方は、食塩を減らすように言われることが多いと思います。しかし、実際に多数の日本人で、食事中の食塩の量と、心血管病との関係を証明した論文は少ないものです。以下は日本人の代表的な論文です。食塩を多く取る人では、脳梗塞が2倍になり、心臓の病気は1.5倍になることが、示されています。

Am J Clin Nutr. 2008 ;88:195-202
NaとKの摂取量と、心血管疾患、脳溢血との関係 1988年―1990年
40-79歳の日本人58,730人(男性 23,119人、女性 35,611人)、Na,Kの摂取量と心血管疾患、脳溢血との関係を調査した。調査期間中の死亡者数は、986人であった。脳梗塞による死亡は、510人であった。くも膜下出血153人、脳内出血227人、冠動脈疾患424人であった。
多変量解析によると、Na高摂取群と低摂取群では、全脳溢血1.55 、 脳梗塞2.04、 全心血管疾患1.42の数値であった。
一方、Kの摂取量との関係については、高摂取群で、死亡の低下がみられた。冠動脈疾患、0.65、総心血管疾患 0.73であった。この関連は、女性の方がはっきりしていた。





 

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