メンタル問題


ストレスが続くことは、脳にどのような変化をきたすか?
一般的に急性期のストレスは、短期的には刺激が増え、体はがんばれるのですが、慢性あるいは反復性のストレスが重なると、体は疲れてきます。ストレスの時に分泌されるコルチゾールは、自然なホルモンバランスにより維持されている生命周期リズムを壊してしまいます。特定のストレスが長くなればなるほど、ストレス対処ネットワークが狂い、バランスがきかなくなります。実は、このストレスに耐えるための脳のしくみも、男女により違いがあることがわかってきました。女性には、不利な話かもしれませんが、脳しくみの違いを知ることにより、女性脳を有効に活躍させられるかもしれないのです。

脳の重量は、女性が少なく、ストレスに対して脳血管に対する負担も大きいので、血管は拡張し、頭痛の原因になることが多いです。頭痛を訴える女性は多く、薬に依存的になりやすいです。そうした、男女の脳のしくみの違いについて、書いて行きます。

視床下部・下垂体ホルモンとメンタルトラブル

人は頭でストレスを感じます。頭の中の視床下部と呼ばれる部分は、ストレスを調節する場所ですが、そこからCRH (corticotoropin Releasing Horumone) と呼ばれるホルモンが分泌されます。CRHは下垂体に働いて、さらに副腎皮質のホルモン(コルチゾール)を増やします。

又、副腎からは、アドレナリンなどの血圧を上昇させる物質や、血糖を上昇させる物質も増えます。こうした物質が増えると、体がストレスという戦闘状態に耐えられる状態となります。慢性の過労状態にある人では労働開始から30分以内で、唾液中のコルチゾールが上昇することが確認されています。


HPA軸と呼ばれる、ステロイドを中心としたホルモンの相互のネットワークは、密にはりめぐらされています。
脳で感じたストレスは、体の離れた部分に影響を及ぼし、免疫細胞、心、腎、消化管など、体の全臓器に影響を及ぼします。

ストレス時の、視床下部−下垂体−副腎系が活性化することを説明しました。略してHPA axis(HPA軸)と呼ばれるしくみは、生命現象に必須です。

この時上昇する代表的ステロイドは、コルチゾールと呼ばれて、副腎皮質から分泌されます。ストレスを感じた動物は、コルチゾールが上昇します。ストレスの程度を数値として評価したい時には、ステロイド物質の測定が利用されています。巷で、ステロイドが恐いと言われる理由は、薬として投与された外来性のステロイドは、生存に必須の物質であるステロイドを産生する能力を、我々から奪ってしまうからです。

男女で恐怖時のステロイドホルモンに対する反応が異なります。男性では、ステロイドは恐怖を忘れ勇敢になるように作用するのに対し、女性はその逆です。

女性は男性と比べ、低レベルのコルチコトロピン放出因子(CRF)に反応し、さらにストレスが強くなっても、コルチコトロピン放出因子(CRF)が、ストレスを治める方向へ対応していくことができにくいのです。コルチコトロピン放出因子(CRF)は、最終ターゲットは、副腎でコルチゾール(ステロイド)を増加させます。

ストレスが続くと、それに対抗する(ストレスをがまんする)ために、人は心のエネルギーを失っていきます。心のロス状態が回復できないでいると、うつや不安障害が高まります。恐怖を感じることもストレスの一種ですが、恐怖はまず扁桃体で感じ、大脳がそれを修飾することを、前回のブログに書きました。

エネルギーの残っている時の大脳皮質は、恐怖に対抗しようとしますが、時には、大脳が恐怖を増強させることがあるわけです。恐怖を感じると、血圧や脈拍があがり、血糖も上昇しストレスに対抗します。しかし、PTSDなどでは、さしせまった恐怖が無い状態で、不安や恐怖が高まります。本来、不安に対抗するように準備された体のしくみが、ストレスをさらに増強してしまう方向に働いてしまいます。

不安発作は、視床下部から分泌されるコルチコトロピン放出因子(CRF)が影響します。ストレスを感じた動物は、視床下部−下垂体−副腎系が活性化します。これを略してHPA axis(HPA軸)と呼びます。このしくみも本来は、恐怖ストレスを治めるために準備されているのですが、この反応が恐怖を治めず、逆に高まるようになっていくと、不安障害、PTDS(外傷後ストレス症候群)が起きてきます。

女性の場合
特に、女性はこうした不安発作の頻度が高くなっています。その理由は、女性は男性と比べ、低レベルのコルチコトロピン放出因子(CRF)に反応し、さらにストレスが強くなっても、コルチコトロピン放出因子(CRF)が、ストレスを治める方向へ対応していくことができにくいのです。

男性の場合
男性は普段から、コルチコトロピン放出因子(CRF)を感じ取る受容体蛋白が低値で、ストレス時には増加するものの、ストレスが持続すると、細胞表面でCRF受容体が内包化という現象を起こします。受容体が隠れてしまう生体反応です。内包化したCRF受容体は感度がにぶり、恐怖の克服ができます。つまり、男性は過度のストレスを感じないように(勇敢であるように)、神経がしくまれているようです。つまり、恐怖の高まり時に強くなれるようです。男性の戦場で感じる高揚感と相通じるのかもしれません。

このコルチコトロピン放出因子(CRF)は、遺伝子から合成されるタンパク質です。この物質のでき方は、個人差があり、かつ、性差があることがわかってきました。さらに、遺伝子の発現に、エストロゲンを感じ取る部分があり、エストロゲンはコルチコトロピン放出因子量に影響を与えます。エストロゲンは不安を増強させる因子として働く事が多いようです。つまり、ここでも、不安発作における「エストロゲンの多彩な神経作用を垣間見ることができます。こうした脳の機能に関係する事実は、さまざまな研究により、裏付けられてきたものです。次の論文コーナーで紹介しています。

 

 
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