ホルモン補充療法(HRT)


学とみ子の著書が出ます(文芸社)。タイトルは、”女性ホルモンという神話”です。つまずき模索する女性像を描きました。女性の誰もが通る地図の無い、目的探しの人生です。

女性ホルモンは、体に何をしているのでしょう。

まず、次の3点で考えていきましょう。

閉経後、ホルモンが下がると、病気になるの?(答え)No
なぜ、閉経しても症状の出ない人がいるの? (答え)健康は維持されているから
女性ホルモンを補充しても、解決しないのはなぜ?(答え)不調の原因は女性ホルモンではないから


40歳を過ぎると、女性ホルモンは下がります。これは測定してみれば明らかなことですが、それが即、病気を起こすと、簡単には結び付けない方が良いでしょう。正常値をみればあきらかなように、更年期には女性ホルモンは低下し、低値が正常となります。もし、閉経していても女性ホルモンが高ければ、それは、ホルモン産生腫瘍の可能性があるのです。

もともと、閉経前でも、女性ホルモンの数値は個人差が大きく、月経の周期によって上下します。女性ホルモンの増減に応じて、月経周期という子宮内膜のサイクルが起きます。ホルモンの効果は、受容体という(細胞内でホルモンを感じとる部分)の働きが人により違うため、ホルモンの効力は血中濃度だけでは判断できません。正常値に大きな幅があるのは、そのためです。つまり、単なる血中濃度で、女性ホルモンの働きを判断することができません。測定値を見て、一喜一憂することは、あまりお勧めできません。

女性ホルモンが高い女性ほど、女性らしい、例えば、肌が美しいとか、気持ちがやさしいとか、体調が良いとかとかは言えないのです。日本でも、低用量ピルの使用が増えてきていますが、その効果と副作用は、常にリスクとベネフィットを天秤にかけて考えていきましょう。

ピルによる治療は、自然な排卵や月経過多を抑えます。副作用を少なくするために、低用量ピルがありますが、骨など女性の健康への長期の予後はよくわかっていません。正常月経は、自然な女性ホルモン量の増減に応じて、卵巣や子宮が反応する結果として起きてきます。自然に起きるホルモン濃度の周期的な変化を、人工的になくしてしまうのがピルです。

子宮筋腫などで出血量が多い人、逆に卵巣や子宮の機能が悪くて、無月経、月経過少になっている人には、この人工的な女性ホルモンによる治療介入は有用です。こうした方では、骨を強くする作用も期待できるようです。しかし、これはあくまで女性ホルモンが不足する方の治療成績です。

正常月経周期の女性では、ピルは、本来の自然なホルモン分泌を抑えますので、ピルによる健康増強効果は、期待できませんし、骨が強くなる効果は、確立されていません。人工的につくられたホルモンについて、拡大解釈をしないようにしましょう。脳の細胞にも、性ホルモンを感じ取る部分が多数ありますので、脳への長期的な影響は不明です。

閉経期には、女性が諸々の病気になりやすいと、考えている方は多いと思います。女性に多い病気は、膠原病、うつ、不安神経症などです。反対に少ないのは、心血管疾患、がん、感染症です。女性は、命取りになる病気は少なく、男性より長寿です。しかし、毒物中毒や薬剤に対する副反応が出やすく、一旦、障害をうけた臓器は、男性より回復しにくいです。

体格から容易に想像できるように、女性はいろいろな意味で予備力が少ないのです。訓練すれば、女性もかなりの能力を獲得することができます。例えば、宇宙飛行士は、女性も活躍できます。しかし、女性は、地上に戻った時に、重力を強く感じ、体の変化の感じ方が大きいようです。スポーツの選手も、十字靱帯損傷など、女性特有に多い外傷があります。女性は、長期の持続力で限界があるような気がします。ですから、将来を見据えての対策が必要ではないでしょうか?更年期特有の症状については、女性自ら、実態を把握し、情報発信をしていく必要があります。


ここで、病気との関係をふまえて、女性の生きざまについて、考えてみましょう。女性は他者を愛し、依存することで満たされてきました。他者を通じて充実感を持つ動物と言われます。成果を信じ、他者に働きかけることで満足します。子育てや結婚は、そうした生活の充実感を味あわせてくれるでしょう。

しかし、他者を通じて感じる生きざまは、他者に依存し振り回される人生でもあります。他人の幸せをまず第一に考え、自らの希望をあきらめ、思い通りでないことを受け入れます。他者は、多くの期待をうらぎりやすいものです。他者から裏切られたと感じ、落ち込む危険をはらんでいます。多くの母親や女性は、自らの力の及ばぬ他者の問題で、悩み続けてしまいます。

家庭内暴力を受けている女性は、シェルターのようなものを役所が用意しても、暴力をふるう男性とよりをもどすことがしばしばあります。そうした場合、社会学者は、共依存という言葉をつかいます。つまり、暴力をうけているにもかかわらず、そうされることに依存している(満足感を得ている)という見方です。これは、多分に男性研究者の視点からの評価ではないでしょうか?

暴力をうけている本人はつらいものです。女性自身ががまんをする理由には、人との仲をとりもちたい、和解に向けてエネルギーをそそぎたいという女性のやさしい気持ちがあります。女性たちは、もっと、こうした気持を整理して、社会発信しないといけないです。家庭崩壊を防いでいる原動力は、女性の忍耐力があるのです。社会学者も、そうした多面的な女性の役割を評価してほしいものです。息子に厳しい父親との仲をとりもつなど、母親にしかできないことがあります。女性のやさしさで救われている人は多くいるはずです。

離婚して子どもを育てていたり、両親を介護していたり、兄弟の面倒をみていたりします。つまり、こうした立場の女性は、複数の他者のために働き、頑張っています。女性は消耗しやすいので、今までは、がんばってきりぬけてきた体が、重荷でだんだん厳しくなっていきます。懸命な女性は、必ずしもこうした苦境をかかえこんで、他人に話したがらないために、いろいろな体の不定愁訴で出てきてしまうようです。 

 
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